2013年11月28日木曜日

筋かい耐力壁の基準

木造住宅の耐力壁には、筋かい耐力壁と面材耐力壁があります。
木造2階建て以下の小規模な木造住宅は四号建築物と呼ばれ、
建築基準法施行令第46条の壁量計算を行います。

この壁量計算に必要な耐力壁に様々な基準があるのですが、
意外と知られていません・・。

先ずは筋かい耐力壁について。
筋かい耐力壁は、柱芯間距離で900mm以上、高さは、幅の3.5倍までとなります。
最大幅は柱芯間距離で2m程度までです。

高さの基準は構造階高で、横架材上端の距離です。

一般的な柱芯間距離910mmの場合、
構造階高(横架材上端距離)で最大3,185mmとなります。
階高が高い場合、910mmの筋かい壁は耐力壁とならない可能性があります。
注意してください。

次に、筋かいは方向によって強さが違います。
圧縮筋かい、引張筋かいと呼びますが、
地震力などの水平力の方向により筋かいの抵抗する力が違うことを意味しています。

令46条の壁量計算用の壁倍率は、
圧縮筋かいと引張筋かいの平均値を壁倍率としています。

この特徴を理解して、筋かいの配置は存在壁量ぎりぎりとするのではなく
各階各方向(できれば通りごと)に圧縮筋かい、引張筋かいの数量を合わせて配置しましょう。
具体的には、筋かいの右向き左向きの数量を合わせるようにすることです。

次回は、面材耐力壁の基準を解説します。

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2013年11月22日金曜日

意外と知られていない木造住宅の安全性検討方法

木造住宅の構造安全性検討方法は意外と知られていません。
建築基準法などをよく理解すればわかることなのですが、
解釈しにくい言い回しが多く、理解するには時間がかかります。

そこで簡単に説明します。
木造住宅の構造安全性検討は大まかに3通りあります。

一つ目は、構造計算(主に許容応力度計算)
基準法上は、木造で3階建て以上、延床面積500㎡超、最高軒高9m超、最高高さ13m超の場合必ず必要な計算です。確認申請にも提出します。

二つ目は、性能表示の計算(耐震等級、耐風等級など)
これは、品確法に規定されている計算で、長期優良住宅は性能表示の耐震等級2以上の計算が必要です。長期優良住宅でも、木造で3階建て以上、延床面積500㎡超、最高軒高9m超、最高高さ13m超の場合は許容応力度計算による耐震等級2以上の構造計算が必要です。

三つ目は、仕様規定です。
基準法上は、すべての木造住宅が行う必要のある構造検討です。
主には、木造で2階建て以下(平屋建て・二階建て)、延床面積500㎡以下(500㎡含む)、最高軒高9m以下(9m含む)、最高高さ13m以下(13m含む)いわるゆ四号建築物は、仕様規定による構造安全性検討を必ず行う必要があります。

自社物件がどの構造検討を行っているのか、行うべきなのかを整理て考えてみてください。
特に四号建築物は仕様規定しかありません。
この仕様規定は壁量に関する簡易計算(壁量計算・四分割法・N値計算など)のみで、柱梁部材、基礎などについては簡単な仕様ルールとなります。
よって、部材の構造安全性、基礎の安全性はほぼ確認していないことになります。

さらに、この仕様規定については四号建築物確認の特例があり、設計者が設計していれば確認申請時に仕様規定による構造安全性チェック(壁量計算・四分割法・N値計算など)を提出する必要がありません。
これがいつの間にか「四号建築物は構造計算しなくていい!」
→壁量計算すら行っていない!、四分割法って何??ってことに繋がっています・・。

最低限、仕様規定は守りましょう!
壁量計算、四分割法、N値計算は必須なのです。
そして、柱梁部材はプレカット業者から伏図が来ますが、
構造計算していないケースが多いですよ。ちゃんと確認しましょう。
プレカット業者に部材の構造計算を依頼するのであれば、ちゃんと対価を支払いましょう。
サービスではできません。当たり前のことです。

建築士であるあなたが出来ない構造計算をお願いするのに、
サービスで構造計算しろと言うのは都合がよすぎます。

また、地盤・基礎は地盤調査業者、地盤補強業者が設計はしませんよ。
地盤調査結果に基づき客観的に地盤改良判定をしているだけで、
地盤補強の提案をしているだけです。
地盤の判定、基礎の設計は建築士であるあなたの仕事です・・。

特に木造住宅業界ではこのあたりを大きく誤解している建築士がとても多いようです。
木造住宅の構造安全性検討方法を理解し、何をやるべきか考えてみてください。

僕のお勧めは長期優良住宅です。
理由は、耐震等級の計算は壁量に関する計算以外に、床や屋根の検討、
部材の検討、基礎の検討とほぼすべての安全性検討を行います。
それに加えて、金利優遇、税制優遇、
ブランド化事業を利用すれば補助金とメリットがたくさんあります。

木造住宅の構造安全性について、真剣に考えてみてください。

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2013年11月15日金曜日

スキップフロアの設計方法

最近、スキップフロア物件が増えている気がします。
段差のある空間は面白味があり、
空間の有効利用にも繋がります。

しかし、構造計画を全くしていないスキップフロアが多いのも事実です。
構造安全性が確保できないのです。

それは設計でも、設計図書でもなく、いわゆる「画(え)」なのです。

当たり前の話ですが、スキップフロアは床面に段差があります。
この床、構造的には「水平構面」と呼び、
耐力壁上部の「ふた」のようなもので、
耐力壁と水平構面のふたで、建物は箱構造になり耐震性能が高くなります。

スキップフロアは、この大切なふたに段差があるため、
地震力を上手く耐力壁に伝達できないことがあります。

構造計算では、段差が小さい場合(各床梁せい内の段差)は、
通常の建物同様に計算しますが、
段差が大きい場合は、段差部分で2棟に分割しそれぞれで壁量計算をし、
各棟の壁量検定比(又は充足率)のバランスも確認します。
事前に一体でも計算はしておきます。

構造計画をするとは、スキップフロアの構造計算方法を理解し、
意匠設計時2棟に分割し計算できるように計画を立てることなのです。
具体的には、段差部分で建物が分割できるよう、
土台、床梁、小屋梁ラインを揃えることです。直線である必要はありません。

ダメなスキップフロアは段差部分が各高さレベルでめちゃくちゃで、
分割できないプランです。当然構造計算はできません。
よって、耐震性能など構造安全性は確保できません・・。

「構造計算するとスキップフロアが成立しなくて設計の自由度を奪われる!」
などと、もっともらしいことを言われることがありますが、
そもそも構造計算できないスキップフロアは構造安全性が確保できない建物で、
建築士という資格を持った方のプロとしての仕事ではありません・・。
自由設計とデタラメな設計をはき違えないことです。

四号建築物は特例があるし、仕様規定は水平構面の検討がないため
デタラメなスキップフロアでも残念ながら建っていたのです。
建築士は設計しただけで終わりかもしれませんが、
そこに住む家族は一生の問題ですよね・・。

スキップフロアは特に構造計画が重要です。
しっかりと構造安全性を確認したスキップフロアを、胸を張って設計しましょう!



*今回の内容は「構造塾」関東第2期1回目の講座内容より抜粋です。

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2013年11月8日金曜日

何とかしたいおかしなべた基礎

最近、木造住宅はとにかく「べた基礎」が多い。
軟弱地盤に有効、耐震性が高い、丈夫などなど布基礎に比べると何かとよさそうなイメージです。

結論から言います。
現在の木造住宅のべた基礎の大半は、軟弱地盤に有効ではないし、耐震性も高くなく、全く丈夫ではありません!!大きな勘違いです!

なぜか??
それはとても簡単なことです。
べた基礎はそもそも鉄筋コンクリート構造です。当たり前ですよね。
この鉄筋コンクリート構造の基本を成していないから問題なのです。

鉄筋コンクリート構造を整理してみましょう。
・鉄筋コンクリート構造は、柱に梁が架かり、梁で囲まれた空間にスラブがあります。
・梁は柱スパンが大きくなれば断面は大きくなり、鉄筋も多くなります。
・梁に貫通口など開ける場合は補強します。
・スラブが大きくなれば厚さが厚くなり、鉄筋も多くなります。

この常識的なことが、べた基礎になった瞬間忘れ去られてしまいます・・。
べた基礎のどこがおかしいのか整理します。
・基礎梁は「立上り」と呼ばれ、スラブを囲う役目を忘れ土台を支えるだけのものと誤解されている。だから梁のように連続させる感覚がない・・。
・基礎梁のスパンは上部木造柱スパンです。しかしこの柱スパンに関係なく断面、鉄筋量が決まっている。スパンが大きくても断面が大きくなったり、鉄筋量が増えることがない。
・連続している基礎梁の一部に人通口をとる感覚がないため、人通口部分で基礎梁を完全に分断させている。
・スラブは区画の大きさに関係なくすべて同じ厚さ、同じ鉄筋量。
大まかにはこんなところです。
(その他にもたくさんあるのですが、ここではこの程度にしていきます)

なぜ、こんなにも誤解されているのか?
それは、固い地盤面に固い鉄筋コンクリートが載っているのだから、変形することがない。と思われているからです。
実は基礎も変形をするのです。
基礎には「地反力」とうい力が地盤面より作用し、基礎梁、スラブを変形させます。
この変形に対して設計をします。(地反力の説明は省略します)
その他、耐力壁両端柱の浮き上りによる力も基礎梁に作用します。

これら基礎に作用する力が理解されていないため、基礎は構造設計不要と誤解されています。

べた基礎を本当に丈夫で耐震性が高く、軟弱地盤に有効としたいのであれば「構造計算」をしましょう。
それと、べた基礎形状は意匠設計にかなり影響されます。
経済的で構造安全性の高いべた基礎としたいのであれば、べた基礎の構造的特徴を理解し、意匠設計を行う必要があります。

構造塾の役割
構造計算を行う物件で、べた基礎が成立しない、(一般的に勘違いされているべた基礎より)ボリュームが大きくなるなど 、基礎に対する意匠設計者との意見の相違がよくあります。
残念ながら基礎に関する誤解が招いていることです。

しかし、プランも確定し、基礎のボリュームもいつも通りと想定し金額も掴んでいるところまで進んでいる状態で、べた基礎不成立により設計変更や基礎のボリュームUPで金額UPは受け入れがたいことなのです。
よく、構造計算すると基礎が過剰設計になると言われますが、全く違います!
巷で構造を無視して勝手に常識としてきた「べた基礎」が異常(過小)なのです。
構造として成立していないのです。

このようなことがなくなるよう設計者に、構造のことを事前に知ってもらいたいと思い「構造塾」をスタートしました。
基礎設計に関する講座では、基礎を構造計算できることを目的とした講座と、意匠設計において知っておくべき基礎の構造的知識を目的とした講座があります。
当然、基礎以外の構造に関する講座も多々あります。
興味があれば構造塾ご参加ください。

最後に、
木造住宅の基礎は最も構造的に誤解され、安全性が低い部分です。
このブログでちょっとでも気付きがあればありがたいと思います。

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