2016年4月22日金曜日

熊本地震現地調査報告その1

4月20日(水)熊本県益城町に行ってきました。
熊本・大分で発生した大地震の現地調査です。

益城町は激震地で、14日、16日と震度7が二回襲った場所です。
激震地だけあって、多くの建物が倒壊していました。

今回の調査は、日本テレビのスッキリ!!という情報番組からの依頼で、木造住宅の耐震性能について現地の状況を見ながら話してほしいとこことでした。
ここはまさに専門分野!すべての予定を日程変更していただき急きょ現地入りです。

短い時間の中で、調査で来た部分を整理してます。
現地の建物倒壊状況を原因別に分けてみました。
倒壊前の状態を手掛かりにしたかったので、グーグルアースのストリートビューを活用しました。

①古い木造住宅
古い木造住宅の特徴として、
・屋根が土葺き+瓦葺きでとても重い
・土壁で壁も重い
・開口部が連続していて壁が少ない
・そもそも耐力壁らしきものが存在しない
こんなところです。
倒壊の仕方は、一階部分が完全倒壊または屋根以外全て倒壊をしています。

②新しいけど建築基準法を順守していないと思われる木造住宅
これは問題ですね。
でも明らかに、周囲のた建物が倒壊していないのに一棟だけ倒壊している建物はあります。
四号特例を誤解した壁量計算も四分割法も、当然N値計算もしていない木造住宅。

その中でも、現地で特に注目したのは、築十年の木造住宅でした。
明らかに倒壊の仕方がおかしい・・。
周囲のもっと古い木造住宅がギリギリ倒壊をまぬがれている中、一階部分が完全に倒壊。
通常こんな倒れ方はしないはず。

できる限りの調査の結果、柱脚の接合金物が見当たらないようです。
柱が何本も土台や横架材からホゾごと抜けて飛んでいました。原因はこれかもしれません。

③耐力壁の配置バランスが悪い木造住宅
これもたくさんありました。
倒壊してしまっている建物でも、ストリートビューで確認すると壁がない・・。
建物は正直に倒壊すると実感しました。
倒壊の仕方は、壁のない方の通りがねじれるように倒壊します。

④地盤が軟弱な場所
これはどうしようもないですね。
本来は建物を建てることを避けるべき土地です。
どうしても建てるのであれば、ここでこそ耐震等級を上げるべきです。
倒壊の仕方は、軒並み倒壊しています。

そんな状況の中、構造計算をしている建物は見事に建っていました。
構造計算(許容応力度計算)までいかなくても、地盤が超軟弱でなければ、
仕様規定の順守(壁量計算、四分割法、N値計算ほか)でも倒壊は免れると思います。

 
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2016年4月18日月曜日

木造住宅の耐震性能

熊本県、大分県で発生した地震により大きな被害が出ています。
相変わらず木造住宅の倒壊が目立ちます。

木造住宅が倒壊するには様々な原因が考えられます。
・古い木造住宅で耐震性能が低いもの
 耐力壁のさほど入っておらず、耐力壁は筋かいが中心で筋かい端部も釘打程度
 耐力壁の配置バランスが悪く、偏心している
 耐力壁両端の柱頭柱脚には適切な接合金物がない
 水平構面は剛床とは程遠いもので、水平力を負担できる構造になっていない
 柱梁などの接合部、梁継手などの補強金物が少ない
 屋根は瓦葺きなど頭が重い
 などなど、地震には到底耐えられない木造住宅です。

・新しい木造住宅で耐震性能が低いもの
 設計者が建築基準法を理解せず、壁量計算、四分割法、N値計算などを怠ったもの

・地盤の状況が悪い
 建物の耐震性能をいくら上げたとしても、地盤が悪ければ木造住宅は倒壊する可能性大

数え上げたらきりがありません・・・。

もっと真剣に木造住宅の倒壊原因を追究し、新築時は最低限の構造検討の義務化、既存住宅は耐震補強の推進をはかれる社会になってほしいものです。

テレビ報道を見ていると、周辺の木造住宅がすべて倒壊した地域と、一部の木造住宅だけ倒壊している地域があります。
一部の木造住宅がなぜ倒壊したのか?
どうして隣の木造住宅は倒壊しなかったのか?
など、疑問に思ってほしいところです。

そこから、耐震性能不足の木造住宅が存在していることが少しずつ認知され、
耐震性能を経験や勘だけではなく「設計する(計算する)」ことの重要性、必要性が浸透していくとよいと考えます。

まずは、近いうちに現地調査に行ってきます。
被災者の皆様に迷惑の掛からぬよう、慎重に。
今後の日本中の木造住宅が構造上安全になることを目指して!

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